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続きから直高SS。
秀長様追悼も込めて。

ちびちびなんとなくイメージしていたものです。
貧乏性なので載せてみます。


「慕われるのはどうにも苦手でしてね」


そう、彼は口にした。
こちらが九官鳥のように何度も何度も好きだ愛しているお慕いしていると連呼する度に、眉間に皺を寄せて困り顔をするものだから、迷惑かと尋ねたのだ。

「迷惑ならすぐに止める。藤堂殿が俺をお嫌いなら、いっそ言ってくれ。その方が諦めがつく」

いつも困り顔ながらも俺に付き合ってくれる人にそんなことを言った。
彼は眉の端を一層下げて、嫌いではないよと口にして、だが苦手なのだと教えてくれた。
「恋慕というやつは期限があるもんでしょう。いつか飽きが来る」
反論しようとした俺の言葉を制し、それに、と顔を歪める。
「盲目になってるうちはいくらでも甘い嘘がつける」
「俺は藤堂殿を裏切りなどせぬ」
「どうだか」
ふい、と庭に視線を逃がし、こちらを見ようともしてくれない。
彼の想いを白状してくれるようになるくらいには、自分は踏みいることを赦されている。それが仄かに嬉しくもあり、同時に心安らかにしてやれない己が情けなくもあった。
「では、藤堂殿は今まで誰も好いた事がないとおっしゃるのか」
不意を突いてしまったのだろうか。しばしこちらを見た後、彼は深く溜め息をついて、あるぜ、と小さく応えた。
「一人、何にも代えがたい人がいる。その人が俺の唯一で、これからもずっと変わらん」
思わず唇を噛む。
己ではない誰かを話す、月明かりに浮かぶ横顔が見たことがないほど安らかで、見惚れるより先に悔しくなった。
彼はちろりと切れ長の目を視線だけ投げ、今宵何度目かの嘆息を漏らす。
「そう怨みがましい目をせんでくれ。故人のことだ」
咄嗟に、すまぬと謝っていた。この人の古傷をこじ開けてしまったらしい己の迂闊さに腹が立つ。
―――この人は最愛の人に裏切られたのか、死という取り返しもできない方法で。
「分かっちゃいるんですよ、この世の中、俺みたいに大事なもんを失くした奴なんざごまんといる。あんたもそ
うでしょう。でもね、だからって全員がそれを受け入れられる訳じゃあないんですよ」
よく見せる、自嘲を含んだ笑みだった。
くい、と唇の片端が吊り上がる。
「すまん、立ち入ったことを聞いた」
垂れた頭に冷たい手が添えられる。彼の手はこちらが不安になるほどいつも冷たい。
「……あんたは、三番でしょうかね」
ぱっと顔を上げて喜びが出かけたところで、中途半端に笑顔が止まった。
俺が三番なら、二番は誰なのだ。
その候補が脳裏に浮かんだからだ。
彼はいつものように俺の心を読んで、「あんたの一の人を、あんたの下にするわけにはいかんでしょう」とくすくす笑った。





秀長様への想いはまさに「敬愛」で恋慕ではありませんが^^;

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